JIA全国大会で沖縄を訪問しました
10月21日から24日まで沖縄本島を訪れました。(公社)日本建築家協会の全国大会が那覇で開催されたこともあり、沖縄の人と文化、街と建築に触れる良い機会になりました。
【なはーと】
JIA全国大会の会場になった那覇文化芸術劇場「なはーと」、名称は「ナハ」「ハート」「アート」を意味しています。劇場では、設計された香山壽夫氏の講演があり、85歳になられる師から久しぶりに建築講義を拝聴しました。建物外観で目を引くのは、那覇の伝統織物「首里織」の編み方を表現した皮膜で、そのコンクリートによる立体的で繊細なデザインがコンクリートの可能性を伝えています。沖縄では通風・日よけ・目隠しに使用される花ブロックなどのコンクリートデザインが特徴のひとつで、風土を大切につくられた建築です。他にも、うるま市の「あまわりパーク」の歴史文化施設の外装には花柄(うるま市のサンタンカ)をくり抜いた薄いHPC版を使用していました。沖縄のコンクリートの文化的発展を感じました。
うるま市あまわりパーク歴史文化施設
【那覇市壺屋】
陶器の壺屋焼の壺屋地区を散策中、地図を見ながら歩いていても迷ってしまいました。目の前に現れた、石と緑に覆われた小径に誘われて入っていくと、沖縄らしい石垣や生垣の坂道が続き、住宅の他に陶器の店が垣間見えます。石垣や門に「石敢當」と文字が刻まれているのを頻繁に見かけます。地元の人に聞いたところ、魔除けのもので、昔の中国の武人の名らしいとのこと。他にも、シーサーや門の正面にある塀ヒンプンなど魔物(マムジン)除けのために設えです。
うるま市中村家住宅のヒンプン
【名護市庁舎】
1981年の竣工から40年が経過した建物はかなり色あせてきていますが、徐々に風化し樹木と一体化した建築になっています。北側の芝生の広場を「あさぎテラス」が取り囲んでいます。テラスの屋根は穴が空いていてブーゲンビリアなどの花木が覆い、涼しい緑陰(訪問した日は28度)をつくっていました。あさぎテラスから2階、3階の庭園のあるテラスに上り建物の東から西まで、北から南まで行くことができ、外部がすべてふれあいと憩いの場所です。竣工当時は自然の風を利用して冷房設備はありませんでしたが、その後市民の要望があって設けられたとのことですが、風土に合ったこの建築はいつまでも残ってほしいと思います。
【備瀬集落のフクギ並木】
名護の北、本部半島の先端にある約400年前に形成された集落です。海岸沿いにあるため防風のため「フクギ」が植えられ、大樹になった並木は、防風、防潮、防砂、防火に適し、その特徴ある景観を含めて現在も守られています。一歩入ると車が入れない狭い道も多く、歩くには適していますが集落の半数程は空き地になっています。住宅の他、ところどころに新旧のショップやレンタル民家が点在していますが、フクギで隠れていて探すのはひと苦労かもしれません。海岸に出ると強風の日でしたが、集落内はそよそよと木々がなびく程度の心地よい風に変わっていました。
【瀬長島ウミカジテラス】
那覇空港と海が見渡せる瀬長島(豊見城市)にあるリゾートエリアです。海に向かった斜面を利用して小さな店舗群が階段状につくられ、階段や通路が上下左右に繋がり、ホワイトで統一された景観は地中海のサントリーニ島をイメージさせます。50店舗ほどの飲食店は、それぞれ海が見渡せるテラスを持ち観光客で賑っています。店舗はすべてRC造の簡単なつくりですが、集合することで群ならではの楽しさが生まれています。
記:野々川光昭