はじめに

ベトナム街並み・建築研修旅行

研修地の概要

 今回の研修旅行はコロナ禍の影響もあり2019年以来久方ぶりで、北部のハノイ、中部のダナンとホイアンを5日間の行程で訪れました。

 ハノイは2010年以来の訪問になりますが、先ず歩いて気づいたのは、当時バイクがほとんどだったのですが自動車が急増していることです。片側3車線の幹線道路では、中央から2車線を自動車、端の1車線をバイクが通行しています。市街地は建物が道路沿いに建ち並び、街並みとしては新旧の建物が連続した景観なのですが、自動車が急増したために駐車場整備が追いつかず、路上駐車はあたりまえで歩道上にも2台並んで駐車していることもあります。バイクの駐車スペースは歩道沿いに整備されてはいるものの、車とバイクの間を縫うように歩かなければなりません。さらに、歩道と横断歩道との間には段差があり、街なかで車椅子やベビーカーを見かけることはありません。歩行者優先になれている我々にとっては、目的地がすぐそこなのに道路を横断できず遠回りしたり、横断歩道を渡ろうとしても車が止まらずおっかなびっくりで車をよけて歩くという、苦労とスリルを味わう日々でした。 そんな思いをして歩いた都市の景観は、街路樹とともに建物の壁面、バルコニーや屋上に緑と花が溢れ、街と建物に人と植物が同居しています。

 特に建物屋上は風が抜け視界が広がる開放的な場所として利用され、植物そして雨よけの屋根と日除けのパーゴラがある形態は、この国の気候風土と文化によるものでしょう。 ハノイ駅周辺と旧市街では新旧建物が高密度で混在した街並み、郊外では人工運河と住宅が一体となったランドスケープを創出した新しい街並みなど新旧のエリアを見ることができました。

 また、郊外の焼物が盛んなバッチャン村にも足をのばしました。

 ダナンは市街と海岸沿いのエリアに分かれ、海岸沿いは十数キロにわたり高級リゾートホテルが建ち、今後も増える勢いです。ホイアンは水辺の世界遺産の町で、古い民家を改修した店舗群などを巡り、夜にはランタンの灯りにつつまれた幻想的な景観を楽しみました。

 そして、それぞれの都市で、ヴォ・チョン・ギア氏 Vo Trong Nghia Architects(VTN Architects)の3作品を訪れました。ベトナムならではの伝統的な素材による自然と人間の共生を目指す建築デザインは、開発と都市化が進むこの国で、あるべき思想を伝えています。

記:野々川光昭

目次